日本語力の中1ギャップ

2023年01月25日

 中学に入ってから大きく環境が変わることに対し、お子さんが適応に苦労することを中1ギャップと言うそうです。

 国語道場の小学6年生(新中学1年生)は、例えば算数ならば、すでに小学校で学ぶ単元の学習をすべて終え、現在はおさらい学習をしています。もうすぐ中学校の予習に入ります。こんな感じで、国語道場では、学習面でお子様方がうまく中学生活に適応できるよう努めております。

 国語道場では、たんに教科学習の中学への橋渡しのみならず、日本語力の中1ギャップを埋める取り組みも行っております。

 かねて私が主張していることなのですが、中学校の学習内容を十分に理解し、習得するのに必要な日本語語彙力は3万語程度です。しかし、「読書指数診断」の調査からも明らかなように、一般的な小学校を卒業して中学に入ったばかりの生徒たちのそれは、23,000語程度です。

 要するに、多くのお子さんが中学校で学ぶ内容を理解するに足る日本語力を持っていない可能性が高いということです。このことを私は大変憂慮しています。

 「まあ、中学校も最初のうちは優しいところから勉強していくから大丈夫なんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、必ずしもそうとばかりは言い切れないところがあります。

 たしかに、英語や数学は、明らかに中1で学ぶ内容は易しいです。学年が進むにつれて、だんだん難しくなるようにうまくできています。

 しかし、問題は社会・理科です。この2教科は、中学3年間で学ぶ内容を難易度順にうまく配列しきれていないところがあります。例えば、中1の地理で習う時差と、中3の公民で習う基本的人権とどちらが易しいか、はっきりとは言えないのではないでしょうか。

 このように、特に社会と理科に関しては、学年と学ぶ内容の難易度とがあまり関係がないことがよくあります。したがって、中1の時点ですでにそれなりの日本語力が身についていなければ、学ぶ内容が十分に理解できず、なかなか習得できないということになりかねないのです。

 私の言う、日本語力の中1ギャップということについて、お分かりいただけたでしょうか。小学校卒業までに相応の日本語力を身に着けていないと、中学に入ってからの勉強の習得に多大な問題を抱えることになるということです。

 この、日本語力の中1ギャップの厄介なところは、本人も周囲の大人もなかなか気づくことができないところです。そこがたいへん恐ろしいところだと思います。