2014年05月19日 20:46

学力は語彙力次第、では語彙力は?

 前回の記事で、子どもがゲームばかりやっていることと学業成績とはあまり関係がないのではないかということを書きました。子どものゲームを禁止したところで、子どもの学習時間が伸びるわけではないという実証的な研究があること、一流大学の学生の多く(特に理系)はおしなべてヘビーなゲーマーだということを紹介しました。

 毎日子どもが憑かれたようにゲームに打ち込んでいる様子を見て、大丈夫だろうかと不安になる気持ちは分かりますが、間違った観念に基づいて子供をしつけることは、当然よい結果には結び付きませんし、親子ともどもストレスがたまるだけです。事実は事実として受け入れ、子どもを導いていくことが必要だと思います。

 さて、子どもの学業に関して、現実と思い込みが大きくかけ離れている例として、このようなものがあると思います。

 「○○(←友達の名前)はあんまり勉強していないのに成績がいい」

 こういうことをよく子どもが言いませんか?私たち教育関係者も含めて、多くの大人はこういうとき、「いやいやそういう奴は人の見ていないところで努力しているんだ」などと諭すことが多いのではないでしょうか。

 本当にそうでしょうか?そんなに勉強していないのにそれなりの成績が取れる子、本当にいませんか?事実として、中学1・2年くらいまでだったら、それほど勉強なんかしていなくても、成績のいい子なんてざらにいますよね。これをお読みになっているあなたはどうですか?これを書いている私も、中学2年生くらいまでは実際にそうでした。結局学習習慣が身についていないので、その後はどんどん下り坂になっていくわけですが・・・。

 それはともかく、自分は頑張っているのになかなか成績が上がらない一方、さして勉強もしていないのにそこそこ点数が取れてしまう友だちがいることを悔しがる子供に対して、大人が、「そいつは見えないところで努力しているんだ」と答える気持ちは分かります。しかし、それは、どういうわけかそれなりにできてしまう子どもがいるという事実を覆い隠して、その子どもに効果の上がらない勉強を強要しているに過ぎないとも言えます。厳しい言い方をすれば、結構罪深いことなのかもしれません。

 先程のゲームと学習時間との関係でもそうでしたが、やはり事実をそれとして受け止めて、最適な方法を考え、それに基づいた指導をしていくということが求められるのではないでしょうか。それほど勉強していないのにできる子は、「隠れて努力している」などとうそを言ってごまかすのではなく、どこが違うのかをしっかりと考えていくことこそが求められるのではないでしょうか。

 国語道場では、「ことばの学校」という主に小学生に向けた読書指導を行っております。その中で、年に2回、「読書指数診断」という読書速度と語彙力に関するテストを実施しています。今年の3月、「ことばの学校」受講者の小学生に加え、普段それを受講していない中学1年生も交えて、「読書指数診断」を実施し、非常に興味深い結果を得ることが出来ました。

 十数名のサンプルではありますが、道場の宿題の到達度と「読書指数診断」における語彙力について、①両方ともよいグループ、②宿題はよいが語彙力の弱いグループ、③宿題は悪いが語彙力の高いグループ、④両方ともよくないグループの4グループを設定し、それぞれの学習成績(塾内実力テスト)との関係を調べました。

 ①と④の成績については言うまでもないのですが、興味深かったのは③のグループの成績でした。中学1年生くらいまでだと、③のグループ、つまり学習習慣がしっかりと付いていないが、語彙力の高い子どもたちは総じて成績が良く、推定語彙数が3万語を超える子どもの場合は、①のグループの子どもたちの成績とほとんど差がありませんでした。

 このことを踏まえて、国語道場では、日本語の積極的な語彙力をつける学習の時間を大幅に増やしました。「積極的な語彙力」とは、しばしな外国語の学習で言われる使える語彙力のようなもので、単に意味を知っているだけではなく、その言葉を使って物を書いたり説明したりできることばの能力のことです。目標は、全塾生が読書指数診断において推定語彙数3万語を超えさせることです。これにより、ちょうど「そんなに努力していないのにそれなりに成績が取れる子ども」のように、同じように授業を受けても、そこで学んだ内容を身につける能力を高めることを図っていきます。

 これは、もちろん「努力しなくてもいい点を取る」ことを肯定するものではありません。先ほども触れましたが、しっかりとした学習習慣が身についていなければ、高校受験までには学業成績はどんどんと悪くなっていくでしょう。私が狙っているのは、学習習慣を身につけさせていくことはもちろんですが、その前段階として、同じように勉強しても現状よりも学んだことを身につける能力を上げさせることにあります。そのために、人為的に語彙力をつけさせる指導を実践していこうと考えているわけです。

 国語道場ではこのように、語彙力が弱い子どもでも、それを強化する指導を行うことで、学ぶ力を向上させようと取り組んでいるのですが、それでは、もともと語彙力の高い子どもというのは、いったい何が違ったのかということが気になるところです。これについては、お茶の水女子大学の内田伸子氏らによる国際比較研究が参考になるように思います。

 それによると、子どもの語彙力は、親のしつけの在り方に大きく影響されるということです。しつけの在り方には、「共有型」・「強制型」などがあるそうです。「共有型」とは、「子どもを大人と対等な人格をもった存在としてとらえ、子どもとのふれあいを大事に、親子で楽しい経験を共有したいと願い、親子の会話を重視して子育てしている、しつけスタイル」といいます。それで、この国際比較調査の結果、「共有型しつけスタイルは子どもの語彙力と相関する。子どもと対等な関係で、親子のふれあいや家族の団欒を大切にし、楽しい経験を享受・共有しようとするしつけスタイルをとる家庭では子どもの語彙が豊かになることが明らかになった」ということです。

 この少々堅苦しい論文の終りのほうに、「『しつけスタイル』は親の子ども観や子どもへの関わり方を変えることにより、制御可能である。子育てに『もう遅い』はない」という言葉があるのは、私にはとても印象的でした。国語道場は、お子様の学力向上のために、皆様の子育てに寄り添える存在でありたいと願っています。

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