2013年12月17日 02:37

大切なのは「ぎょぎょぎょ」と「じぇじぇじぇ」

 漢検の日本漢字能力検定協会の会報『漢検ジャーナル』に、タレントで東京海洋大客員准教授のさかなクンのインタビューが掲載されています。興味深い内容なので道場生全員に配布することにしました。ぜひお読みになってください。

 魚介に対する愛情を貫いているところ、自分にチャンスを与えてくれる人々との縁を大切にし自己実現を果たしているところと、一風変わっているけれども、立派だなあと尊敬の念を抱いてしまいます。2010年、当時絶滅したと考えられていたクニマスが、彼の活躍で再発見されることになったのですが、これを天皇陛下が名指しでお讃えになったという栄誉は、彼の生き方に対する天からのご褒美のようにも感じられます。

 彼のような人物を見ていると、ついつい自分の子供にも何か好きなことを見つけてそれを一生懸命やりなさいと言いたくなります。しかし、子供たちにとっては現実に自分の好きなこと、やりたいことを見つけるというのは大変難しいことです。自分の好きなことを見つけることが目的化してしまって、「自分探し」にはまり込んで抜け出せなくなってしまう人もいるようです。子供に、好きなことを見つけなさいという言葉かけは、あまり正しくないのかもしれません。

 『あまちゃん』というドラマが今年大ヒットしましたが、さかなクンはこれにも出演していました。「ぎょぎょぎょとじぇじぇじぇ」というドラマ内番組の出演者という役でした。大切なのは、この「ぎょぎょぎょとじぇじぇじぇ」ではないかと思うのです。もちろん、子供が自分の好きなことを見つけられるようになるにはということです。

 『あまちゃん』の主人公アキは、もともと東京育ちでしたが、母の実家の北三陸で初めて出会った海女さんたちの「じぇ」という感動詞を知って、とても面白がります。この言葉は、皆様も知ってのとおり、ドラマを象徴する言葉の一つとなりますが、それが意味するところは驚きと感動、好奇心です。東京であまりものを思わない生活をしていたアキは、北三陸の人々と出会い、「じぇじぇじぇ」という言葉に象徴される、「すごい」、「本当に?」、「かっこいい」、「面白そう」、「やってみたい」という感情を強烈に感じられるようになりました。それによって様々な仕事に挑戦したり、いろいろな人々の生き方にかかわったりしていく人間に成長していったのです。

 アキの「じぇじぇじぇ」とさかなクンの「ぎょぎょぎょ」がドラマの中で重なるのは、なかなか興味深いことです。「ぎょぎょぎょ」というさかなクンの言葉は、つまらない一発ギャグではなく、彼の生き方を示すものです。彼にとって、「ぎょぎょぎょ」という気持ちは魚介が好きということに先行しているのではないでしょうか。彼が魚介好きになったのは、自分の好きなことを見つけるといった薄っぺらい動機から来たのではなく、「ぎょぎょぎょ」という感情、周囲のものに驚きを見いだせる強い好奇心が彼をそこに導いていったものと想像します。

 してみると、われわれ大人は子供に対し「なんでも自分の好きなことを見つけなさい」と言うのは、間違いではないにしてもどうもいま一つの対応であることが分かります。本当に大切なのは、自分の周りにあるあらゆるものの中から「ぎょぎょぎょ」、「じぇじぇじぇ」と感じられる感受性を育むことなのです。

 さて、国語道場で行っている読解指導ですが、塾長は子供たちの知的好奇心を少しでも刺激できるように、いつの間にか工夫してきていたことに自分で気づかされました。国語道場では、入試で役立つだけの読解の指導は行っていません。そこから先、自らを成長させるために、子供たちが本当の読書に向かっていける力を育てるべく努力しています。また、そうでなければ本当の意味での読む力を育てることは不可能です。

 人はなぜ文章を書くのでしょうか。それは、自分の見聞きしたことに驚きと感動があり、それを広く人に知らせたいからです。自分の周囲のものの中に好奇心を感じられない、なんとなくぼんやり日々過ごしている人は、いくら読解のお勉強を重ねたところで、読めるようになりません。文章の作者の感動を共有しようという心ができていないからです。

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