「ことばの学校」でどうして子どもは読書好きになるのか

2023年02月02日

 国語道場では、「ことばの学校」という読書指導を、西千葉地区では独占的にご提供させていただいております。

 「ことばの学校」の中心的なアクティビティは、朗読音声を聞きながら本をまるまる読んでいくという、シンプルなものです。

 これを続けることで、多くのお子さんの日本語語彙力が飛躍的に伸び、文章の読解が正確になるなど、あらゆる学びの基盤である国語力全般が向上しています。

 このようにお子さんの学力・成績が伸びることも喜ばしいことですが、それ以上にうれしいのは、「ことばの学校」の受講をきっかけに、読書が好きになるお子さんが、けっこういることです。最近も、ある保護者の方から、「ここのところ動画視聴が多くなっていたが、『ことばの学校』をきっかけに、読書習慣が復活した」といった嬉しいお知らせをちょうだいしました。

 子どもが読書好きになるのは、親としては何ともありがたいことだと思います。「読書好き」ということ自体が、なんとなく素敵な感じがするというのもありますが、《学ぶ》ということは、ほとんどの場合「本を読む」ことに等しいと言えるからです。お子さんがどんどん本を読むということは、お子さんが自動的に自分から進んでいろいろなことを学ぶということです。

 どうして「ことばの学校」を受講者のお子さんから読書好きがたくさん生まれるのか。この謎を解明するためにジャングルの奥地へと足を踏み入れ・・・ることはなく、かねがね不思議に思っていたのですが、最近、中学生の国語の授業のために読み込んでいた問題集の文章に、とても素敵なものを見つけました。それを今日は紹介したいと思います。

 その文章というのは、川上弘美さんの「ゆっくりさよならをとなえる」の一部です。

 川上さんは、小学3年生の時に、1学期まるまる、病気のために学校に行けないことがあったようです。

 病気と言っても重篤なものではなく、いつまでも微熱が続く程度のもので、生活自体は特に問題なくできていたようです。そういうわけで、退屈で仕方がなかったとのことです。

 漫画や友達からもらった手紙を繰り返し読んだり、あやとりのような一人遊びもやりつくし、母親に退屈だと文句を言ったところ、読書を進められたということです。

 勧められるままに読み始めたところ、なんと本が読めなかったと言います。

文章を読み続けることが、つらい。文章の意味が、よくわからない。挿絵もろくにないから退屈。一冊に入っている文章を全部読まなければならないかと思うと、憂鬱。本を読むことは、実に困難なことであった。読みつけていない人間にとっては。

 子どもに限らず、本を読まない(読めない)人の気持ちを、これほど端的で正確、かつちょっとユーモラスに表現しえた文章も、なかなかないのではないでしょうか。

 ここで、この川上さんのお母さんが、また立派です。娘のために読み聞かせをしてくれたそうです。

驚いた。自分で読んでいる時には面白くもなんともなかった本だったのに、読んでもらうと、これがめっぽう面白い。わくわくする。本って、こんなにいいものだったのかと、ぼうぜんとした。毎日母に読み聞かせをしてもらう時間は、黄金のひとときとなった。

 いい話ですね。ちょっとしたエピソードのようですが、どこか心を揺さぶられるものがあります。

 その後川上さんは、母親に読み聞かせてもらった本を、今度は自力で読んでみたそうです。すると、なんと自力で読むことができたということです。母親の読み聞かせをきっかけに、本を読める人間になったと書かれています。

 面白いのは、自身も芥川賞など、数々の文学賞を受賞してきた作家であり、最近はそうした賞の受賞者を審査する立場に立つような高名な文学者も、読書家になるきっかけというものがあって、それが幼児から少し成長した年齢における本の読み聞かせであったということです。

 ここに至って、私も、なるほど「ことばの学校」受講者に読書好きがたくさん生まれてくる理由が分かったような気がしました。

 子どもにとって、本の文字からだけで内容を読み解いていくのは、なかなか難しいことです。そこに、それを読んでくれる声が入ることで、格段に書かれていることが分かりやすくなる。そして集中して本の世界に入り込むことができるようになる。

 そうした体験がある程度進んでいくことで、おのずと本を読む力が培われて、やがて朗読音声がなくても自力で本を読めるようになるということではないでしょうか。

 国語道場は、この読書指導「ことばの学校」を導入して10年になりますが、川上さんの文章を読んで、また改めて「ことばの学校」をもっともっと皆様にお勧めしたくなりました。

 現代では、なかなかおうちの方が平日からお子さんに本の読み聞かせをするというのも難しいでしょう。そういうところは、テクノロジーの力を借りちゃいましょう。

 読書指導「ことばの学校」、無料体験授業は随時承っております。どうぞお気軽にお問合せください。