塾はサボってもいいんです

2022年03月02日

国語道場の本棚には、たくさんの本が並んでいます。

そのほとんどは読書指導「ことばの学校」の授業で使用するものですが、それとは関係のない本や漫画もたくさん並んでいます。生徒たちが授業開始時刻よりも早く道場に来た時などに読んでいます。

それらの本の中に、漫画家の水木しげるの『妖怪大百科』という本があります。その中に「ゲゲゲの鬼太郎」でも有名なぬり壁という妖怪について、興味深いエピソードが書かれていました。

水木さんが、太平洋戦争中南方で戦う一兵士であったことは有名ですが、ジャングルでの戦いのさなか、水木さんは何とぬり壁に遭遇したのだと言います。

敵襲から逃れ、真っ暗なジャングルの中を進むうちに、何かが前方に立ちはだかって一歩も前に進めない。なんとか前進しようと突っ込んだり、左右の脇を探ってみたりしても、何者かが水木さんの行く手をさえぎっている。どうしたものかと、すぐ近くにあった石に腰掛けて一休みして、それから先ほどのところに戻ってみると、その時にはもうなにも邪魔するものはなくなっていて、すんなりと先に進むことができた。

このように、遮二無二前に進もうとしてぬり壁に邪魔をされたら、ちょっと気分転換をしてみるといいらしい、なんてことが書かれていました。

国語道場は授業料定額で毎日通える個別指導の塾です。法外な料金を吹っ掛けるチェーン個別指導塾がはびこる中、国語道場のタイプの個別指導塾を作ることは私の念願でもありましたので、これ自体は素晴らしいシステムであると確信しています。

最近は新年度ということで、やる気に満ちあふれ、意欲のみなぎる新入塾生が入ってきています毎日のように塾で授業を受けて、「もっと授業を追加させてください」、「明日も○時から来ていいですか」といった感じで、道場はとても盛り上がっています。

しかし、毎年、頑張りすぎて息切れしてしまうお子さんがいることも確かです。

たいていの生徒は、そこから自分の生活習慣を見直して、最適な通塾パターンを構築していくことができるようになっていきますが、頑張りきれない自分について、少し自己否定的になってしまうお子さんもいます。

そんな時は私は迷わず、「塾はサボっていいんだよ。その代わりちゃんと連絡してね」と言うようにしています。

何ととんでもない塾だと思われる方もいるかもしれません。そういう意見は尊重はします。

しかし、勉強は何よりも続けられることが大切で、ちょっとやりきれなくなったくらいですべてを断念してしまうことになっては元も子もありません。まして、それが原因で子どもが自己否定的になっているならば、大人として手を差し伸べることが必要だろうと私は思います。

そもそも国語道場の個別指導のシステムなら、あとでいくらでも挽回が可能です。そこいらのケチなチェーン個別指導塾のように、授業を増やすなら追加料金を払えなんてことは言いません。満席でなければ無料でいくらでも授業が追加できるのですから、ご当人の納得がいくまで私たちも徹底的に付き合います。

私が大学受験生だったころは、大学受験ラジオ講座というものがありまして、力のある予備校講師の素晴らしい授業を、ほとんどテキスト代だけで受講することができたものです。いい時代でした・・・。

その先生方の中で、今も大手予備校の第一線で教えている宮崎尊先生の言葉を思い出します。

「英語の勉強っていうのはね、とにかく完璧主義にならないでね。1回2回放送を聞かなかったからといって、もうあとやらなくなっちゃう人がいるんだけど、そういう人は真面目な人が多いのかな。そういうのが一番もったいないんだよね」

だいたいこのような感じだったでしょうか。

私自身、この宮崎先生の言葉に大いに救われた感じがしたものです。お蔭さまで、何とか大学受験勉強も目標達成まで継続することができたと思っています。

なにはともあれ、勉強で大切なことは、24時間365日頑張り通すことではなく、継続することです。そのためにはちょっとくらい塾をサボったっていいのです。そうして一休みしてみたら、あなたのぬり壁もどこかにいなくなってしまうことでしょう。