理科・社会はいかに「勉強」しないで済ませるか

2014年07月22日

 いよいよ夏休みが始まってしまいましたね。お母様方には長い試練のときです。心よりお見舞い申し上げます。

 とは言え、子どもたちにとっては楽しい時間です。何か一つでもいいですから、お子さんと一緒に何かを見たり、やったり楽しい体験をしていただければと思っております。今回のテーマに関連して言いますと、理科や社会のような教科は、子ども時代にどれだけ体験的な学びがあったかどうかが決定的な意味を持っているように思います。

 中学生の定期テストについて、保護者の方がよく言われることに、このようなものがあります。「理科や社会なんてただの暗記物じゃないですか」。

 これは一面では正しい考えです。理科や社会の重要語句などは、一問一答形式の問題でどんどん即答できるまで覚えていなければ、テストで高得点を取ることは出来ないでしょう。大学入試レベルの問題ともなると、膨大な分量の事項を暗記することが必要になるので、いかに頭に叩き込むかということは大変重要であることは間違いありません。

 しかし、理科・社会がすべて暗記だけで何とかなると考えてしまうことには大きな落とし穴があります。そもそも、どうして暗記ができる子とそうでない子が出てしまうのでしょうか。できなかった子は、「ただの暗記物」の勉強が足りなかったのでしょうか。たしかにそれはあり得ますが、それだけではちょっと認識が甘いよう思います。そもそも暗記することができるベースとなる力がついていないと思われることを、日々目撃しているからです。

 この「暗記することができるベースとなる力」とは、知的好奇心と常識的知識です。この二つがなければ、「ただの暗記」すらできなくなってしまう可能性が高いです。

 では、この知的好奇心と常識的知識はどのように身につけさせることができるか。それは、理科や社会は、いかに「勉強」させずに済ませるか工夫する努力にかかっているといってよいでしょう。

 基本的に、知的好奇心と常識的知識は、同時に身につけさせていくものです。さまざまな博物館に出かけたり、体験学習的なイベントに参加したりすることは有効です。また、家庭内で出来ることとして、自然科学系の図鑑や歴史まんがなどの資料を、子どもがいつでもアクセスできるように揃えることや、テレビの報道・教養番組を視聴する、選挙に子どもを連れて行くことなどがあります。

 こうしたことは、できるだけ保護者の方と一緒に行うことがよいと思います。また、資料を買い揃えるときは、シリーズ全巻をバーンとオトナ買いするのではなく、ちょっとずつ集めていくのがコツです。たとえば、昆虫に興味を持っているようだったら昆虫図鑑、恐竜博に出かけたら恐竜図鑑を買い与えるとか、歴史漫画なら学校や塾の学習進度に合わせ、月に1・2冊ずつ集めていくといったほうが、食いつきはよいと思います。

 ある程度軌道に乗ってくれば、あとは子どもが勝手に学んでいってくれるようになるでしょう。生物や地学、歴史などなら、一般的な小・中学校で学ぶ内容が少なすぎる、物足りないと子どもが言うくらいには持っていけると思います。

 知りたいという気持ちを満たすということにおいて、勉強は本来楽しいものです。しかし、知的な好奇心が育っていない状態で、ただ何かを暗記せよという課題が突きつけられれば、そのような「勉強」は苦行でしかありません。子どもが、自然や人間の社会的営みに関心が持てるようになっていれば、多少苦しい勉強も耐えることが出来るでしょう。しかし、そうでなければ、子どもが進んで「苦行」をやってくれないからといって、大人がそれを非難することは出来ないのではないでしょうか。

 常識的知識は、子どもに知的好奇心を育む創意工夫の中で十分にカヴァーできるものです。しかし、子どもにそれを身につけさせる方法として有効な、マスメディアの報道・教養番組の視聴について、最近は少々気になる状況にあるように思います。

 子育てをしている世代など、比較的若い年齢層で、新聞の購読率が非常に下がっているそうです。インターネットの普及が背景にありますが、テレビの報道もあまり見ず、スマートフォンなどで自分の関心のある情報ばかりを見る人が増えているといわれています。

 常識的知識をわきまえた大人はそれでいいのかもしれませんが、子どもたちにとってはあまりよくありません。中学生で、社会や理科が苦手だというのでよくよく事情を調べてみると、結局5大陸も指し示せない、47都道府県も怪しいなどということは、実は珍しくありません。こうした、最低限の常識的知識は、無味乾燥な棒暗記を行うよりも、報道・教養番組などを長年繰り返し視聴することで、十分に覚えられてしまうはずのものです。

 子どもが勉強好きになってほしいとお思いでしたら、やはり家庭は文化的であるように努めてほしいと思います。スマフォを解約しても、新聞は購読して欲しいですね。最初子どもは「ののちゃん」や「コボちゃん」を読むだけかもしれませんが、それでも意味はあります。テレビを見ながら朝食なんてお行儀が悪いなんてつまらないことを言わずに、朝は「おはよう日本」を見てください。私、別にNHKの回し者ではありませんが、気象情報一つをとっても、やはりNHKの番組はクオリティが高いと思います。